さて、前回までの結果、この会社の各社員に計上された資本金の額等は次のとおりです。
資本金 資本剰余金 利益剰余金
A 100万円 0円 100万円
B 100万円 0円 0円
全体 200万円 0円 100万円
この合同会社において、2回目の決算が確定し、当期は200万円の赤字決算という結果になりました。定款に別段の定めがないため、この赤字分は各社員の出資の価額に応じて分配されました。これを反映した結果、次のような状態となりました。
資本金 資本剰余金 利益剰余金
A 100万円 0円 0円
B 100万円 0円 ▲100万円
全体 200万円 0円 ▲100万円
会社全体の利益剰余金がマイナスでり、対外的な印象が悪いので、AとBは話し合い、資本金の額を減少し利益剰余金のマイナスを解消しようということになりました(会社法620条)。必要な手続を終え(会社法627条)、会社全体の資本金を100万円減少しました。上記の表はどうなるでしょうか。というのは、減少した100万円はAとBのどちらの分から減少したのでしょうか。これは、会社の業務の決定として業務執行社員の過半数で決定します(会社法590条、591条)。
今回は、50万ずつ減少したとすると、上記の表は次のようになります。
資本金 資本剰余金 利益剰余金
A 50万円 50万円 0円
B 50万円 50万円 ▲100万円
全体 100万円 100万円 ▲100万円
なんだ、利益剰余金のマイナスが消えていないじゃないか、ということになりそうです。合同会社は、損失のてん補のために資本金の額を減少することができますが、損失とは剰余金のことであって、資本剰余金と利益剰余金の合計額のマイナスことです。そのため、上記の表の状態になると、100万(資本剰余金)+ ▲100万(利益剰余金)=0となり損失のてん補は完了となります。
ただ、これでは利益剰余金のマイナスが残ったままです。どうすればよいでしょうか。この場合は、損失の処理を行います。損失の処理は、利益剰余金のマイナスを解消するために、資本剰余金を減少させ、利益剰余金を増加させることです。
今回は、資本剰余金を100万円減少させ、利益剰余金100万円を増加させます。そうすると、次のようになります。
資本金 資本剰余金 利益剰余金
A 50万円 0円 50万円
B 50万円 0円 ▲50万円
全体 100万円 0万円 0円
会社全体の利益剰余金のマイナスは解消されました。AはプラスでBはマイナスですが、個人ごとにこういう結果になるのはやむを得ません。ただ、損失の処理もBのみの資本剰余金を減少し、Bのみの利益剰余金を増加することも可能です。ただ、損失のてん補の資本金の額の減少の場合と違い、定款に別段の定めがなければ、Bの同意が必要です。というのは、この処理をすると、利益剰余金に振り替えられた資本剰余金の部分については、社員は、出資の払戻しを受けることができなくなってしまうからです(注)。
そのため、出資の価額に応じない割合で損失の処理を行うのであれば、定款に定めがある場合を除き、対象となる社員の同意が必要ということです。
注)相澤哲編著『別冊商事法務300 立案担当者による新会社法関係法務省令の解説』(商事法務、2006)168頁
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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