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持分の差押債権者による退社の登記の添付書面

2024年04月13日 15:35

 しばらく、合同会社の「計算」の話を続けていこうと思っていたのですが、ちょっと気づいたことがあり、今回は合同会社の(業務執行)社員の退社の登記に関する添付書面のお話です。しかも、持分の差押債権者による退社(会社法609条)という、とてもマニアックな論点です。実務ではあまり関与することはないと思いますが、ご容赦ください。


 実体法上の手続として、債権者は、6か月前までに合同会社及び持分差押えの相手方の社員(以下、「対象社員」とします。)に予告をしなければなりません。なお、対象社員が弁済等の対応をすれば、差押えの必要はなくなりますから、この予告はその効力を失うものとされています。


 以上を前提として、この手続による退社の手続をする場合、松井・商業登記ハンドブック4版683頁では、持分差押命令書並びに会社及び対象社員宛ての退社予告書(略)等を添付するものとしています。下線部分ですが、実体法上、両方に予告が必要であるため、その手続を踏んているのかどうかを確認する必要があるということでしょうか。しかし、対象社員宛の予告書の原本は対象社員が保有しているはずですから、会社が添付することは難しいはずです。よって、これは、差押債権者から予告書の控えの提供を受けて添付するのだろうと個人的には考えています。

 ちなみに、新日本法規出版の商業登記総覧2452の17頁には、予告書に代え、差押債権者の、弁済、担保提供がない旨の上申書でもよいとの記載がありました。


 ところで、今回の本題(?)です。前記の松井・商業登記ハンドブック4版の記載ですが、3版664頁では、上記の下線部が「会社宛ての退社予告書(略)等」となっており、対象社員宛ての退社予告書が不要なようにも読むことができました。

 実は、3版が出版された後に上梓した拙著『商業登記実務から見た合同会社の運営と理論第2版』(中央経済社)218頁で、松井・商業登記ハンドブックでは、会社宛ての退社予告書のみで可という見解だと思われるという記載をしておりました。

 もしかしたら、この記載をみて、4版を出版される際、「そうじゃないよ、3版では省略して書いたけど、対象社員宛てのも必要だよ」ということをさりげなく加筆されたのだろうかと思ってしまいました。

 

 松井先生が拙著を読んだりはしないかもしれないので、自意識過剰なだけだろうとは思います。それはそれとして、書籍も版が変わったら、こまめにチェックが必要だと意識させられました。

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