前回は合同会社設立時の計算のことを書きました。
不定期になりますが、順次、新しい記事を書いていこうと思います。
今回は、その合同会社に新しく社員Bが現金100万円を出資して加入したことを想定した計算のことを書いてみます。
ただ、設立後、Bの加入前に、最初の事業年度が終了し、利益剰余金100万円が発生し、会社全体の資本金が100万円、利益剰余金が100万円の状態だという前提とします。
この会社にBが100万円を出資して加入したら、どういう状態になるでしょうか。ただし、Bの出資は全額資本金に計上するものとします。
もちろん、会社全体の資本金は200万円、利益剰余金は100万円となります。
では、各社員毎にはどのようになるかというと、次のようになります。なお、定款には特に損益の分配についての定めはないものとします。
資本金 資本剰余金 利益剰余金
A 100万円 0円 100万円
B 100万円 0円 0円
全体 200万円 0円 100万円
ご覧いただくとわかりますが、特徴的なのは利益剰余金です。Aに100万円計上されていますが、Bには0円です。なぜでしょうか。
合同会社をはじめとした持分会社では、事業年度が終了し、損益が確定すると、原則としてその時点で各社員に損益が分配されます(会社法622条)。そして、分配された損益について、社員の側から利益の配当を請求するという形になっており(会社法621条)、損益の分配と利益の配当が区別されています。
よって、この合同会社において、最初の事業年度が終了し損益が確定すると、その時点の社員はAのみですから、確定した損益はAに分配されます。その後に社員として加入したBには分配されないのです。
この点、会社法立案担当者の解説では、次のように言っています(注)。
「持分会社においては、(略)、各事業年度の損益をその事業年度の損益の帰属を受けるべき社員に分配することとなるため、当該事業年度において社員でなかった者、すなわち、当該事業年度の終了後に新たに社員となった者(持分の譲受けによって社員となったものを除く)には、当該事業年度(それ以前のものも含む)の損益は分配されない(ただし、定款で別段の定めをした場合には、それに従うこととなる)。」
株式会社は、株主総会で剰余金の配当を決議し、その時点(あるいは基準日時点)の株主が配当を受けますが、イメージでいうと、この剰余金の配当には持分会社でいう損益の分配と利益の配当の両方が含まれているということになるのかもしれません。
この点が、合同会社をはじめとした持分会社の計算と大きく違うところです。株式会社の法務支援等を専門とする私達士業にとっても、注意が必要な点だと言えると思います。
注)相澤哲編著『別冊商事法務300 立案担当者による新会社法関係法務省令の解説』(商事法務、2006)165頁
立花宏 司法書士・行政書士事務所
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